数式を書く練習
お久しぶりです。少し近況報告をします。最近はあまり趣味数学をせず、高校数学の復習に没頭しています。一方で、ようやく数研出版の『大学教養 微分積分』を購入し、今さっき第一章を読み終わったところです。
一応他にも大学の微積の本は二冊持っているのですが、今回初めてちゃんとした教科書を買えて、これまでの曖昧な理解を改められるであろうことが楽しみです。
さて、そもそも何故いま記事を書いているかというと、はてなブログ上で数式を書く方法を試したかったからです。普段、主な数式はmathchaで書いたものを保存、トリミングして貼り付けているのですが、本文中に数式を書くときは lim_n→∞(a_n)=0 のような感じで、とても読みづらい状態でした。
そんな時、はてなブログ上で数式を書く方法があるというのを知ったので、今後はそれを使いたいと思い、練習に次の6つの式を作ってみました。
ド・モルガンの法則
二次方程式の解の公式
組合せの総数
垂心の位置ベクトル
区分求積法
ε-N論法
たった6つの式ですが、これだけ使えるだけでもだいぶ表現は広がるかと思います。これらの作成には次の二つのサイトを参考にさせていただきました。ありがとうございます。
これで今後の記事は今までより少し読みやすくなるかもしれません。
今回はこの辺りで。ではまた。
対数関数の公式
趣味数学ばかりやっていて、高校数学の力が確実に落ちてるなと感じています。なので最近は高校数学の問題も解くようにしていて、ブログの内容もしばらく高校数学にしようかと考えています。
それで、今回は対数関数の公式について軽く話します。高校の教科書に載っている公式は大きく分けて次の3つです。
log_a(a^k)=k, log_a(b/c)=log_a(b)-log_a(c), log_a(b)=1/log_b(a) といった公式もありますが、それらは上の公式の特別な場合として見なします。
さて、実際はこの3つで足りるのですが、時には追加で覚えていた方が解きやすくなる公式もあります。それが次の3つです。
ちなみに (5) を使えば、底と指数を同じ数で冪乗できることになります。
これらをフル活用した問題は次のようになります。
特に指数を整理するところが、いちいち底の変換公式を使っていたら面倒なんじゃないかと思います。1つ目と2つ目は、主に (5) の使い方が違います。行数は同じですが、2つ目の方が全体的にすっきりしてるかも?最後の計算が面倒なのは、僕の作問センスのなさです笑
短かったですが、最後にいつ使うかわからない公式を載せて終わります。
大したことではないのでしょうが、真数が積の場合は対数の和なのに対して、底が積の場合は''逆数の和の逆数’’(実用的には''和分の積'')なのは、対象性があるようでいいですね。実用性は知らんです。
ではまた~。
「二胞角」ってある?
先にことわっておくと、今回の内容は重大な誤りを含んでる、または無意味な内容である恐れがあります。今回の内容に大きく関連する次の記事についても、同様である恐れがあります。
さて、前回、二面角という概念を使って、存在し得る4次元正多胞体の種類を絞り込むということをしました。それで今回は、5次元正多胞体の種類も絞り込めないかなと考え、考察することにしました。
それで、正多面体のときは二辺のなす角、4次元正多胞体のときは二面のなす角を使ったなら、5次元正多胞体のときは二胞のなす角かな?と考え、二胞角という概念を考えました。二胞角は次のように定義することにします。
2つの空間の法線ベクトルのなす角の大きさ。
しかし、二面角のときは外積により法線ベクトルを求めることができましたが、外積というのは3次元用に定義されたものです。さて困りました。
そこで、冒頭にリンクを張りましたが、過去に n 次元で使えるように拡張した外積を考察していました。それを使って胞の法線ベクトルを求め、二胞角を計算してみました。煩雑になったので計算過程は省略し、一部の結果だけ書いています。
約75°となりましたが、これは2倍、3倍しても360°未満だが、4倍すると360°を超えてしまう角度です。つまり、3種類しかない5次元多胞体の2つは、正五面体から構成されていそうです(英語版のWikipediaを除いたところ、実際そのようです)。
残り一つは恐らく3次元における正方体である正八胞体の正統進化です。計算はしてないですが、きっと正八胞体の二胞角は90°でしょう。
他の正多胞体については、大変だったので今回は諦めました。ですが、正五胞体や正八胞体の次に一番あり得そうな正十六胞体は正四角形→正八面体の系列らしく、それらの「角」は 90° → 109.47° と大きくなってるので、正十六胞体では 120° を超えているんじゃないかと予想しています。
[補足(21/02/22)] ちょうど120°でした。
ちなみに正五胞体の二胞角は arccos(1/4) でしたが、前回求めた正四面体の二面角は arccos(1/3) でした。さらに言うと正三角形の角は 60° すなわち arccos(1/2) です。つまり、正三角形→正四面体→正五胞体の系列(単体と呼ぶそうです)は n 次元において n-1 次元多胞体どうしのなす角が arccos(1/n) になるんじゃないかと想像しています。実際、それで n がいくら大きくなっても 90° 未満で、2種類の n+1 次元多胞体の構成要素となり得ます。ですから、案外あり得ない話じゃないんじゃないかと考えています。
さて、これで終わりですが、今回なぜ珍しく冒頭に曖昧さの警告を書いたかというと、リンク先で拡張した外積の性質として書いた「n 次元の外積においても、その大きさは n-1 個のベクトルが張る多胞体の体積に等しい」が、今回計算した中で確認できなかったからです。ですので、拡張された外積の信頼性が怪しいと感じています。もし原因が分かれば改めて更新しようと思います(しばらく線形代数に触れないうちに、すっかり忘れてしまったので、いつになるか分かりませんが…)。 [訂正(21/02/24)] 計算し直したら体積に一致しました。ただし、リンク先の内容の再確認はできていません。
一応、外積として求めたベクトルが法線ベクトルとなっていることは確認できたので、二胞角自体は正しいと考えています。が、そもそも二胞角って何やねんって感じなので、今後そちらの考察もできたらいいなと考えています。
少しは調べてから書いたつもりですが、あまり役に立つ情報が得られなかったので、半ば僕の妄想のようなものかもしれません。何かご指摘や情報があればコメントをよろしくお願いします。ではまた~。
[補足(21/02/22)] 調べたところ、すべての正多胞体の二胞角を載せて下さっているサイトが見つかりました。
どうやら正五胞体の二胞角も、n 次元単体の二胞角についての予想も正しかったようです。また、正十六胞体の多胞体はまさに120°で、5次元多胞体を作れないギリギリでした笑。他の角度は敢えて載せることはしないので、気になる方はこちらのサイトを読んでみてください。
2/15 ~ 2/22 に公開した記事一覧
数カ月放置していたブログだったが、春休みに入ってからモチベーションが上がり、一週間あまりで既に 15 回も更新しています。あまり洗練された内容は書けていないが、このブログを目にした人に少しでも面白いと思える内容に出会ってほしいと思い、二月更新分をシリーズごとに整理しました。本流からは逸れる記事については、関連する記事から → で紹介しています。(内容に誤りが疑われる場合は、ご指摘いただけますと幸いです。)
変数を複素数にしたとき、指数関数・対数関数・三角関数がどのように振舞うのかを紹介したシリーズ。高校範囲外の数学に興味を持ち始めたきっかけであり、今でもお気に入り。
加法から始める巨大数シリーズ
冪乗の正統進化というべきテトレーションや、僕の大好きなランベルトのW関数について紹介したシリーズ。巨大数がでてくるのは後編からだが、正直そっちはおまけだったりする。
ガンマ関数、リーマンゼータ関数、素数係数関数について、分かる範囲で紹介した記事。
場合の数シリーズ
前半では高校範囲の場合の数を、後半では二項係数と似た漸化式をもつスターリング数、ベル数を紹介するシリーズ。
正多面体が5種類あることに倣って、正多胞体が6種類ことの証明に挑戦してみた。一応目標は果たせたが、慣れない概念を扱っているので怪しい部分も多いかも。
物理と微分方程式の関係に少し興味があった頃、ふと気になったので計算したものの記録。計算式を貼り付けているだけなので、あまり読まれることは想定していない。
正多胞体が6種類あることの証明?
正多面体は 5 種類しか存在しません。一方、正多角形は無限に存在します。
では、4 次元版正多面体といえる正多胞体は何種類存在するのだろうか?
念のため説明すると、4 次元空間の立体は 3 次元空間の立体(胞)により構成されます。立体は面、面は線により構成されていることを考えれば分かるでしょう。そして、そのような 4 次元空間の立体のなかでも、正多面体から成るものを特に正多胞体といいます。
さて、正多面体の種類の個数を調べるとき、一点に集まる角の和が 360° 未満であることを利用しました。それと同様に、今回は''一辺に''集まる角の和が 360° 未満であるという事実を使います。そして辺に集まる角は面と面の成す角であるわけですが、そのような角のことを二面角といい、次のように定義されます。
二面角は、法線同士の角度として定義される。(Wikipedia より)
さて、面の法線を求めたいのですが、ここで便利なのが外積です。外積は二つのベクトルに対して、次のような定義・性質を持ちます。
2 つのベクトルの成分を掛けたり引いたりすることで、その両方に垂直なベクトルを作ることが出来るのです。ですので、今回はこれを使って二面角を求めていきます。
しかし、ベクトルで二面角を求めるには、正多面体の頂点の座標を知る必要があります。今回はここがメインではないので、Wikipediaから調べてきました。
正四面体から正八面体は、割と直感で求められそうな気もします。正十二面体と正二十面体はやや複雑ですが、黄金比がでてくるのは美しいですね。どうしてこんな座標になるのか導出が気になります(僕も分かっていません)。
さて、座標が分かったので実際に二面角を計算してみましょう。なお、僕は外積や二面角の扱いに慣れていないので、手探りでの計算しているので、おかしいところがあれば教えて頂けると幸いです。
このように正四面体から正八面体の二面角を求めることが出来ました。ただ正十二面体と正二十面体はこれらと比較にならないくらい複雑そうなので、Wikipediaを参考にしました。すると、5つの正多面体の二面角をそれぞれ次のようになることが分かりました。
さて、これにより正四面体から正十二面体までは一辺に3つ集まり得ることが分かりました(残念ながら正二十面体はダメなようですね)。さらに正四面体は4つや5つも集まることが出来ます。ということで、正多胞体は全部で6種類存在しそうなことが分かりました。
これは実際正しく、正多胞体は正四面体からなる正五胞体、正十六胞体、正六百胞体、正六面体からなる正八胞体、正八面体からなる正二十四胞体、正十二面体からなる正百二十胞体の6つが存在します。
さて、これで終わってもいいのですが、もう少し正多胞体について自力で計算できないかと思い、別の計算を行ってみました。*1
今回は、11種類の正多胞体が存在し得るという結果になってしまいました。しかし、一辺に集まる角の数に注意すると先ほどの議論から (N,v,e)=(6,8,4),(6,20,5),(12,8,4),(12,20,5),(20,20,3) は実現不可能だと分かります。すると結局残ったのは6つとなります。
この計算により、先ほどは分からなかった一点または一辺に集まる胞の個数が分かりました。それをもとに各 (N,v,e) に対応する正多胞体の頂点、辺、面そして胞の数を表にまとめてみました。
Mの値を調べる方法は分からなかったので、Wikipediaで対応するものを調べました。どうにかして簡単に求める方法はあるのでしょうか。
正600胞体という胞の数もすごいですが、その辺の数が1200というのはさらにすごいですよね。ちなみに5次元以上では正多胞体は3種類ずつしか存在しないようです。そう考えると、低次元というのも悪くないなと思います。(実際、高次元におけるポワンカレ予想はオリジナルのポワンカレ予想よりも先に証明されたそうです。)
参考にしたサイトは次の通りです。
今回はこれで終わりにします。ではまた。
*1: 「4次元における多面体定理」とは(凸?)多胞体の頂点、辺、面、胞の個数をそれぞれ v,e,f,c とすると v-e+f-c=0 となるというものです。どうやって知ったのか(または証明したのか)忘れましたが、恐らく3次元におけるものと同様、胞を1つ取り除いて三次元図形に置き換え、さらに胞を正四面体に分割して一つずつ取り除いていくことで証明できるだろうと思います。ソースがなくてごめんなさい…。ちなみに n 次元では n 次元立体の個数すなわち1を足す、または引くことで常に右辺を1にできるという話もあります
スターリング数とベル数
前回、高校で習う代表的な順列・組合せを見てきました。
今回はより難しい問題について、スターリング数やベル数と呼ばれるものを使って考えていきます。
[補足(2021/02/21)] ちなみにスターリング数の「スターリング」は、階乗の近似式であるスターリングの公式と同じようです。
第2種スターリング数
次のような問題を考えてみましょう。
n 人を k 個のグループに分ける方法は何通りあるか?
ただし、各グループの人数は異なってよいが 0 人のグループは認めない。
似たような問題は前回見ました。「n 人を k 個の部屋に入れる方法は何通りあるか?ただし 0 人の部屋があってもよい。」です。これは重複順列の考え方で n^k 通りと答えることが出来ました。
しかし今回は各グループが必ず 1 人以上であり、しかもグループの区別がされていません。これを既習の内容を使って求めるのは難しそうです。
そこで、求める場合の数を次のように表すことにします。
二項係数の ( ) が { } になったものです。
そして、(i), (ii) の2つに場合分けをします。
(i) (n-1) 人が k-1 個のグループに分かれている場合
この場合、残りの1人は1人でグループを作らなければなりません。0 人のグループはグループと認められないからです。
つまり、このとき n 人を k 個のグループに分ける方法は、(n-1) 人を (k-1) 個のグループに分ける方法と同じだけあります。
(ii) (n-1) 人が k 個のグループに分かれている場合
この場合、残りの一人は k 個グループのどれかに属することになります。つまり、このとき n 人を k 個のグループに分ける方法は、(n-1) 人を k 個のグループに分ける方法の6倍だけあります。
さて、(i), (ii) のことから次の (3) の式を求めることが出来ます。
(1) については n 人を n 個のグループに分ける方法は、明らかに 1 人のグループを n 個つくるという一通りしかありません。(2) については 1 人以上を 0 個のグループに分けることはできないので、0 通りとなります。
これらによって、計算した結果は次のようになります。
このような数を第2種スターリング数といいます。これは本来次の等式を満たすものとして定義されています。
これが何故、上で挙げたような漸化式で表せるのかは、証明がやや難しそうだったので省略することにします。しかし、k=3 を例に計算すると次のようになり、確かに成り立ちそうなことが確認できます。
ベル数
次は条件を少し変えて、このような問題を考えます。
n 人をグループ分けする方法は何通りあるか?
各グループの人数は異なってよい。
今回も次のように文字をおくことにしましょう。
この問題は、先ほどのものの''k 個のグループに''が消えたものになっています。つまり、1 個のグループに分ける方法から n 個のグループに分ける方法まで、すべて足したものを求めるということです。つまり、次のような式が成り立ちます。
これにより計算すると次のようになります。B₀ は 0 人を 0 個のグループに分ける方法は 1 通りと解釈します。
しかし、これを計算するには第2種スターリング数を n+1 個も求めなければならず、面倒です。なんとかベル数だけで漸化式を立てることはできないでしょうか?
やや難しいのですが、実は可能です。簡単のため、今回は n=4 のときを考えてみましょう。今回は次の (i) から (iv) に場合分けします。
(i) 4 人目が属するグループが 1 人の場合
この場合、他のグループの 3 人のグループの分け方を考えればよいです。つまり B₃ 通りです。
(ii) 4 人目が属するグループが 2 人の場合
この場合、まず 4 人目と同じグループの人が誰かで ₃C₁ 通りあります。そして、他のグループの 2 人の別れ方が B₂ 通りとなります。
(iii) 4 人目が属するグループが 3 人の場合
この場合、まず 4 人目と同じグループの人が誰かで ₃C₂ 通りあります。そして、残された 1 人は 1 人でグループを作るので 1 通りです。
(iii) 4 人目が属するグループが 4 人の場合
この場合、明らかに 1 通りです。
以上のことから、次の式を求めることが出来ます。
このような数のことをベル数といいます。
第1種スターリング数
最後に次のような問題を考えます。
n 人を k 個のグループに分け、円卓に座る方法は何通りあるか?
ただし、各グループの人数は異なってよいが 0 人のグループは認めない。
また、円卓の区別はしないとする。
今回は求める場合の数を次のように置くことにします。
そして、また (i), (ii) に場合分けします。
(i) (n-1) 人が k-1 個のグループに分かれている場合
この場合、n 人目は 1 人のグループを作らなければならないので、n 人が k 個のグループに分かれて円卓に座る方法は (n-1) 人が (k-1) 個のグループに分かれて円卓に座る方法の数に一致します。
(ii) (n-1) 人が k 個のグループに分かれている場合
この場合、n 人目は k 個のグループのどれかに属して円卓に座ることになります。属するグループごとに座れる場所の数はことなりますが、3 人が座る円卓であれば座れる場所は 3 通りあり、4 人が座る円卓であれば座れる場所は 4 通りあることを考えると、 (n-1) 人が k 個のグループに分かれて円卓に座る方法の数の n-1 倍になることが分かります。つまり、次の (3) の式が成り立ちます。
(1) は n 人が n 個のグループに分かれて円卓に座る方法は、1 人ずつのグループに分かれて円卓に座るしかないので 1 通りです。(2) は 1 人以上が 0 個のグループに分かれて円卓に座る方法は存在しないので 0 通りです。
この式を使って計算することで、具体的な値は次のようになることが分かります。
このような数を第1種スターリング数といいます。これも元々は次のような等式を満たすようなものとして定義されています。
左辺は上昇階乗冪ですね。下降階乗冪は?と思われるかもしれませんが、こちらも第1種スターリング数を用いることで、次のように簡単に表すことができます。
また、第2種スターリング数は和をとるとベル数になりましたが、第1種スターリング数は和をとると階乗になります。
二項係数(おまけ)
ところで、スターリング数の漸化式ってなんか既視感があると感じたんですが、やはり二項係数の漸化式とほぼ同じなんですよね。また、和をとると 2 の冪になります。
スターリング数だなんて初めて聞くようなものが二項係数と似た漸化式を持つと知ると、少し親しみが湧きますね。せっかくなので、全部並べてみます。
冪は重複順列、階乗は順列、二項係数は組合せと考えると、この繋がりは少しすごいように感じます。
今回参考にしたサイトは次の通りです。
ではまた~。
高校で習う順列・組合せ
今回から順列・組合せの求め方を紹介していきます。なぜそんな初歩的なところから始めるかというと、ベル数とスターリング数について書きたいと思ったのですが、それらが組合せにおいて意味を持つため、基礎から順を追った方が良いと思ったからです。
今回は最後までは行かず、高校数学で扱う範囲を整理します。ただし、高校では使わない表現を一部含んでいます。
重複順列
最も簡単な重複順列から始めます。重複順列は「n 種類のものを k 個並べる方法」です。たとえば「リンゴ、ミカン、ブドウを5個並べる方法は何通りか。ただし1個も並ばない果物や2個以上並ぶ果物があってもよい。」といった問題があります。これは1個目の選び方が3通り、2個目の選び方が3通りとなり、3個目、4個目、5個目も同様です。したがって、そのような並べ方は 3×3×3×3×3=243(通り) あります。
一般に「n 種類のものを k 個並べる方法」が何通りあるかは次のように表されます。
ただ、今回は重複順列の意味に沿った例を挙げましたが、一見重複順列に見えない問題が出題されることが多そうです。たとえば「5人を3個の部屋に入れる方法は何通りか。ただし0人の部屋があってもよい。」という問題は「並べる」という単語が出てきません。しかし5人を整列させて、部屋番号を書いた札を渡すと考え直すと「3種類の札を5枚並べる方法は何通りあるか。ただし一枚も並ばない札や2枚以上並ぶ札があってもよい。」という問題に読み直すことができます。
恐らく重複順列は「n 種類のものを k 個並べる方法」という考え方との他に「n 個のものを k 個の状態のどれかにする方法」という考え方を持っておいた方がよさそうです。
順列
今度は異なるものを並べることを考えます。つまり「n 個の中から k 個選び、並べる方法」です。重複順列では同じものを複数個選ぶことが許されるため「種類」という言葉を使いましたが、今回は一個しか選ぶことができないため「個」という言葉を使いました。
問題の例としては「1から5の数字が書かれたカードが1枚ずつある。この中から3枚を並べて作れる数字は何通りか。」といったものがあります。これは一の位の選び方が5通り、十の位の選び方が(一の位で使ったものを除いた)4通り、百の位が(一の位、十の位で使ったものを除いた)3通りですので、5×4×3=60(通り) となります。
一般に「n 個の中から k 個選び、並べる方法」は次のように表されます。
n の k 乗の k に下線が引かれたようなものは下降階乗冪とよばれるもので、n から n-k+1 までの整数を書けたものです。1小さい整数を掛けるという階乗的な要素と、k 個の整数を掛けるという冪的な要素が融合しているので、このような名前なのでしょう。
''下降''とあることから分かるように上昇階乗冪というのも存在します。ただ今回は必要ないので説明しません。
少し発展的な内容に円順列というものがあります。「n 個の中から k 個選び、円状に並べる方法」です。よりイメージしやすい言い方をすると「n 人の中から k 人選び、円卓に座らせる方法」です。順列における並びの先頭と最後尾を繋げると円になりますが、このとき1人ずれても同じものと見なされます。そのため、回転させる方法が k 通りことあるから、順列を k で割る必要があります。
さらに発展的な内容になると数珠順列というものがあります。これは「n 個の中から k 個選び、円状に並べる方法(ただし裏返すと一致するものは同じと見なす)」のように、円順列より条件が厳しくなったものです。ただしこれは、円順列を2で割ったものになります。
一般に、円順列と数珠順列は次のように表されます。
組合せ
次は組合せです。順列と何が違うかというと、順列では選んだものを並べたのに対し、組合せでは並べません。つまり「n 個の中から k 個選ぶ方法」です。
たとえば「10人の中から代表を3人選ぶ。代表の選び方は何通りあるか。」といった問題があります。このままでは少し考えづらいので、一度順列の問題を経由します。つまり先に「10人の中から代表を3人選び、並ばせる。代表の並び方は何通りあるか。」という問題です。これなら ₁₀P₃ 通りだとすぐに分かります。しかし、元の問題では並べる必要はありません。ですので、それぞれの代表の選び方に対する代表の並び方の個数で割る必要があります。並び方は 3! 通りなので、最初の問題の答えは ₁₀P₃/3!=120(通り) だと分かります。
一般に「n この中から k 個選ぶ方法」は次のように表されます。
( ) の中に縦に2つの数を書いたものは二項係数とよばれ、(x+1)^n を展開した式の x^k の係数として知られています。
重複組合せ
最後に重複組合せです。これは「n 種類から k 個選ぶ方法」で、重複順列と異なり並べる必要はありません。例題は「リンゴ、ミカン、ブドウから5個選ぶとき、選び方は何通りあるか。ただし 1 個も選ばれない果物や 2 個以上選ばれる果物があってもよい。」という問題です。これは「〇 5 つと | 2 本を並べる方法は何通りあるか。」とい言い換えることができ、さらには「〇または | が入る 7 つの枠から、| が入る枠を 3 つ選ぶ。枠の選び方は何通りあるか。」という問題に言い換えることが出来ます。つまり、組合せの問題です。
なぜ「〇 5 つと | 2 本を並べる方法は何通りあるか。」という問題に言い換えることができるかというと、たとえば「〇〇|〇〇〇|」という並びのとき、|で仕切られた区間ごとの〇の個数を数えると2個、3個、0個となります。これらをそのままリンゴ、ミカン、ブドウの個数に当てはめるのです。そうすることで、この問題の答えは ₇C₂=21(通り) と分かります。
一般に「n 種類から k 個選ぶ方法」は次のように表されます。
おわりに
今回はここまでにします。次回からベル数とスターリング数の紹介に入ります。これらを知ることで「n 人をグループ分けする方法」「n 人を''k 組に''グループ分けする方法」「n 人を k 組にグループ分けし、円卓に座らせる方法」が何通りあるか求めることが出来るようになります。
ではまた~。