NTMRの数学メモ

数学について調べたことを書きます。高校数学に毛が生えた内容。

行列式の定義と基本的な3つの性質

 今回扱う内容、本当は昨日投稿するつもりだったんですけど、PCを閉じたせいか書きかけが消えてしったんですよね…。月曜にはテストがある状況でこんなことしている場合ではないですが、作った画像を使わないのも落ち着かないし、大した内容でもないのでちゃちゃっとまとめています。

 

 それで、今回は行列式の定義ですね。2次と3次の場合の行列式は簡単で、昔の数Cでも扱っていただろうと思います。端的に言えば(右斜めの積)ー(左斜めの積)で求まります。3次の場合はサラスの公式を使って、2stepに分けて書いてみました。

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 ここまでは分かりやすいですが、ここまでの理解であると4次以上の場合にどう定義されているのか分かりません。実は、すべての自然数nに対して、n次の行列式は次のように定義されています。

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 n=3の場合を例に挙げます。まず、集合S_nすなわちS₃の元は①1,2,3 ②1,3,2 ③2,1,3 ④2,3,1 ⑤3,1,2 ⑥3,2,1 の6つです。つまりΣはσ=①,②,…,⑥についての和をとればいいです。

 そして、それぞれ 1,2,3 に並び替えるまでの置換の回数は①,④,⑤が偶数、②,③,⑥が奇数となります。ゆえにsgn(①)=sgn(④)=sgn(⑤)=1,sgn(②)=sgn(③)=sgn(⑥)=-1です。

 したがって、3次の行列式a₁₁a₂₂a₃₃-a₁₁a₂₃a₃₂-a₁₂a₂₁a₃₃+a₁₂a₂₃a₃₁+a₁₃a₂₁a₃₂-a₁₃a₂₂a₃₁で、並び替えればサラスの方法で求めたものと一致することが分かります。

 

 少しややこしい定義ですが、このおかげで次の3つの性質が分かります。

  ①転置不変性:転置行列ともとの行列の行列式は等しい。

  ②交代性:二つの行を交換した行列ともとの行列の行列式は符号が逆である。

  ③多重線形成:ある行を他の行に加えた行列ともとの行列の行列式は等しい。

 1つずつ証明していきます。

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 これもn=3の場合を考えます。σとτの関係性が分かりづらいですが、例えばσ=②の場合を考えます。a₁₁a₂₃a₃₂を第二の添え字が1,2,3の順になるように並び替えるとa₁₁a₃₂a₂₃となります。ここで第一の添え字をみると1,3,2となっているので、σ=②に対応するτはτ=②です。他のσについても調べると、次のように対応していることが分かります。

 (σ,τ)=(①,①),(②,②),(③,③),(④,⑤),(⑤,④),(⑥,⑥)

 (①1,2,3 ②1,3,2 ③2,1,3 ④2,3,1 ⑤3,1,2 ⑥3,2,1)

こうして具体的に調べて気づきましたが、対応するσとτが異なるのは④と⑤のときなんですね。

 本当はこの一対一対応も証明するべきなのかもしれませんが、第二の添え字の数列σを1,2,3に並べて第一の添え字の数列τが現れたのに、τを1,2,3に並べ直すとσ以外の第一の添え字の数列が現れたら明らかにおかしいので、その辺を使って証明できるんじゃないかなーって思います。

 

 次に交代性です。

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 恐らく今回はσとτの対応よりも、sgn(σ)=-sgn(τ)の方を説明すべきだと思います。

 数列σ=(σ(1),σ(2),σ(3),……,σ(i₁),……,σ(i₂),……,σ(n))の第i₁項と第i₂項を入れ替えた数列はτ=(σ(1),σ(2),σ(3),……,σ(i₂),……,σ(i₁),……,σ(n))ですが(画像とは異なり,k≠i₁,i₂についてτ(k)=σ(n),τ(i₁)=σ(i₂),τ(i₂)=σ(i₁)の置き換えをしていません)、τを1,2,3,……,nと並び変えるまでの置換の回数の偶奇は、τをσに並び替えて(すなわちσ(i₂)とσ(i₁)を入れ替えて)から1,2,3,……,nと並び替えるまでの置換の回数の偶奇と同じです。

 そこでτにおいてσ(i₂)とσ(i₁)はそれぞれ第i₁項と第i₂項にあるので、σ(i₂)とその左の項との置換を(i₂-i₁)回繰り返すことでσ(i₁)は第i₁項に戻ります。このときσ(i₂)は第(i₁+1)項にあるので、σ(i₂)とその右の項の置換を(i₂-i₁-1)回繰り返すことでσ(i₂)は第i₂項に戻ります。σ(i₁)の移動で右にずれたσ(i₂)以外の項も、これでもとの位置に戻りました。

 ここで、τをσに並び替えるまでの置換の回数は

  (i₂-i₁)+(i₂-i₁-1)=2(i₂-i₁)-1

より奇数回ですから、σとτを1,2,3,……,nと並び替えるまでの置換の回数の偶奇は逆になります。(∵偶+奇=奇、奇+奇=偶)

 したがって、sgn(σ)=-sgn(τ)が成り立ちます。

 

 最後になんだか名前のカッコいい多重線形性です。

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 n=3の場合を例に、第1行に第2行を加えた場合について考えてみましょう。3次の行列式は6つの積の和を求めればいいですが、その積の1つとして(a₁₁+a₂₁)a₂₂aa₃₃があります。このまま和をとるのは見当がつかないので分配法則を適用してa₁₁a₂₂aa₃₃+a₂₁a₂₂aa₃₃とすると、a₁₁a₂₂aa₃₃はもとの行列の行列式を求めるときに和をとる6つの積の1つになります。ほかの積についても考えてみると、もとの行列式と一致する部分を作ることができます。

 そして、余った部分はa₂₁a₂₂a₃₃+a₂₂a₂₃a₃₁+a₂₃a₂₁a₃₂-a₂₁a₂₃a₃₂-a₂₂a₂₁a₃₃-a₂₃a₂₂a₃₁ですが、実はこれはもとの数列の第1行を第2行に置き換えた行列の行列式に一致します。ゆえに、②の証明の*以降で示した内容から、この和(行列式)は0となります。

 

 以上で今回の内容は終わりです。まだ線形代数学を勉強し始めたばかりというのもあるし、分かっていても表現が難しいというのもあり、なかなか手こずりました。多分、分かりにくいと感じるところも多々あったと思います。

 人に読んでもらうなら理解を深めてからこういうものは書くべきかもしれませんが、疑似的に人に説明することで理解を深められるのではないかとも思うので、気が向く範囲でこのブログは続けていくつもりです。

 

 コンパクトシリーズは線形代数も読み終わり、初めはベクトル解析や複素解析を買うつもりでいましたが、ここまで軽く通ってきた分野についても理解が十分とは思えないので、そのような新しい内容については今はYouTubeで授業動画を見て満足するに留め、次は東京出版会の線形代数入門を読んでみようと思います。

 コンパクトシリーズと出会う前から買ってはいましたが、なかなか読み進められずにいました。ですが、軽く雰囲気を掴んだ(と思っていいのか?)今なら、比較的読みやすいのではないかという期待を込め、再び開いて見ようと思います。

 

 最近になって理解が追い付かなくなってきたので、ちゃんと問題を解いて理解しているか確認しないといけないと思うようになったのですが、実はあまり問題を解くことには興味がないです。今日気づいたのですが、多分、僕にとって数学を学ぶことは語学を学ぶ感覚にちかいのかなと思います。何かをしたいわけではないけど、他の人が言っていることを理解したり、新しい世界を知ったりするために(あとは数学のカッコいい言葉を意味を理解して使いたい笑)勉強しているので。その代わり、別に知りたいと思わない分野については必要性を感じなければ放置ですし、そういうことができるのは趣味数学の特権だなーと感じます。

 あと、目標としては有名だけど証明を知らない(+高校範囲で理解できない)もの理解していけたら嬉しいです。かなり大雑把ではありますが、ディリクレの積分の雰囲気を掴めたのは嬉しいかったです。sin(x)/xは導関数が初等関数で表せないと知ってかなりショックを受けたのを覚えているので笑

 フェルマーの最終定理は憧れますが、流石にハードルが高すぎるので、大学生のうちに五次方程式が代数的な解を持たないことあたりをなんとなくでもいいので理解できたらと思っています。

 

 なんだか抱負的なものが思った以上に長くなってしまいました。あと一週間を乗り越えれば夏休み。車校は心配だし、バイトも始めたいですが、それでもインドア派の僕には時間が有り余ると思うので、数学の勉強を進められることを期待しています。

 

 あ、次に線形代数についてブログにするときはクラメルの公式や逆行列を求める公式について書く予定です。約束を守るかは不明。では。