初等関数で表せない不定積分について
前回の最後に、次はテトレーションについて書くと言っていましたが、別のものに興味が湧いたので今回はそれについて書きます。参考にした主なWikipedia記事はこちら。
数Ⅲの積分を習った方は、慣れてきた頃にこのような疑問を持ちませんでしたか?
「sin(x)/xの不定積分はなんだろう?」
え、持たなかった?そうですか...。
結論から言うと、答えは存在しません。より正確に言うと、初等関数では表せません。初等関数というのはざっくり言うと、x, sin(x), log(x)等のお馴染みの関数やその合成で得られる関数のことです。クラスに数学が得意でイキっててウザい人がいたら出題してみてはどうでしょう。
この他にも不定積分が初等関数で表せないことで有名な関数は沢山あります。しかし、それらの不定積分は「初等関数では表せない」が答えだとつまらないですよね?ですから初等関数で表せないことを受け入れ、それらを新しい関数として定義してしまいます。そういったものを特殊関数というらしいです。
今回はそう言った代表的(?)な例を挙げてみました。これが下の画像です。
特殊関数のグラフを描写することができなかったので、代わりに不定積分する前のグラフを添えておきました。各自ググるか、頑張ってイメージしてみてください。
指数積分Ei(x)や対数積分li(x)はWikipediaを見ると微妙に異なる定義が書いてありますが、コーシーの主値というのが何かよく分からないし、海外の方の動画で画像通りの定義を板書していた(口頭で何を言っていたのかは分からなかった)ので、このブログで扱う分にはこの定義で問題ないと思います。
さて、特殊関数を定義したことで新しい武器を得ました。これを使って早速、これまで求めることができなかった不定積分を解いてみたいですよね!
今回はWolframAlphaを使って不定積分を初等関数+上4つの関数を表せることが確認できた、次の4つの不定積分を求めていきます。WolframAlphaで先に答えを確認したのは、それが解けない問題ではないことを確認するためです。適当に思いついた関数を不定積分することは、あまりお勧めしません。
はじめは2,3個にするつもりだったのですが、思った以上に多くなってしまいました。ここには載せてありませんが、(e^x)/xの不定積分もEi(x)を用いればEi(x)表すことができます。あまりにも多くなるので今回は割愛しました。
また、ここまで読んでくださっている人がいるかどうかも怪しいですが、ここから先は気になるものだけ見ていっていただければと思います。
初めに、問題1~3を解いていきます。お察しの通り、これらはSi(x)またはCi(x)を用いて表すことができます。(似た関数の不定積分も答えだけ添えてあります。)
WolframAlphaは課金しないと計算過程が見れないのでこれらは僕が作った答案ですが、いずれも部分積分や置換積分といった高校数学の範囲で解ける問題になっています。個人的なお気に入りは問題3です。むしろ、これを書くためにこの記事を作ったまであります。
ちなみにx→∞のときSi(x)→π/2であることが知られています(ディクレ積分)。証明には線積分とかいう方法を使う必要があるみたいなので、このブログで扱うことは一生ないと思います。
次に問題4~6を解いていきます。こちらはEi(x),li(x)を用いて表すことができます。ちなみに、この2つの関数にはEi(log(x))=li(x)という綺麗な関係式が存在します。このことは問題6の過程で証明しています。
今回扱う問題はここまででお疲れさまでした。以上で見てきたように、Si(x), Ci(x), Ei(x), li(x)を導入することで不定積分を求められる関数はグンと増えそうです。
...ここまで来たらx^xの不定積分も求められるんじゃないか?x^x=e^(xlogx)だし。WolframAlpha先生に聞いてみよう。
無理でした。